アメリカ西海岸の歴史的な干魃でアーモンドの樹を取り除く活動が始まる

アリゾナからオレゴンにかけて幅広い地域で干魃に

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の発表では西海岸のアリゾナ、カリフォルニア、ネバダ、ユタ、オレゴンは記録的な干魃傾向となっています。アリゾナ、ユタ、ネバダ、カリフォルニア州では砂漠気候も多く、夏の乾期で水不足になることは良くありますが、オレゴン州は夏でも緑豊かな地域として有名で干ばつ傾向になることは非常に珍しい州です。

 
アメリカ西海岸の干魃状況(2021年6月10日時点)-NOAA

今年の干魃が特にひどい理由

ここまで干魃が進んだ理由として

  • 2020年の雨期(10月から翌年3月)にかけて降水量が極端に少なく、最も暖冬で乾燥した雨期となりました。そのため多くの貯水池で貯水レベルが過去最低レベルとなったり、標高の高い地域で充分な降雪量が無く春以降の雪解け水が得られない状況となりました。
  • 2020年自体の平均気温が史上2番目に高く、それに伴い土壌からの水分の蒸発も活発だったため土壌自体の水分がかなり低い状態になっていました。また山に降った雪も急激に溶けるため土壌に吸収される前に海洋に達してしまい十分に土壌に水分を供給できませんでした。

これらの理由により西海岸の多くの地域で過去最悪レベルの干魃となっています。カリフォルニア州はイチゴ、柑橘類、ナッツ類、トマトなど多くの作物の主要産地となっています。カリフォルニア州の干魃はかなり深刻な状況となっています。

カリフォルニア州の状況

カリフォルニア州の干魃状況(2021年6月10日時点)-NOAA

カリフォルニアは主に砂漠気候の南部と、地中海性気候の北部に分かれます。特にサクラメントからサンノゼにかけて続く「セントラルバレー」と呼ばれる地域はカリフォルニアの農業の中心地でアメリカ国内の食糧の約1/3、フルーツ・ナッツ類の約2/3を生産しています。今年の干魃および水不足によりカリフォルニア州で50万エーカーの農地で作物が栽培できない可能性が出てきています。

昨年に比べほぼ全域で干魃あるいは異常乾燥状況に

干魃面積の推移

ちょうど12ヶ月前の2020年6月にはカリフォルニア州の40%は平常レベルでした。前述の通り雨不足と暖冬の影響で例年であれば6億立方メートルの降水降雪量がありますが、2020年はほぼゼロとなりました。そのため2021年初頭には既に全域で異常乾燥あるいは干魃となり、6月には85%の地域で「重度の干魃」あるいは「極度の干魃」となっています。

この影響も有りカリフォルニア州およびオレゴン州では干魃異常事態宣言を発令、カリフォルニア州では6000億円レベルの財政出動を行い干魃の対応にあたる予定です。並行して取水制限、水の使用量の割当などを実施しています。

水の割当がゼロとなる農家も続出

カリフォルニア州では水の割当量がゼロとなる農家が続出、水を多く必要とする作物の栽培を止める、あるいはアーモンドの樹を切り倒すなどの措置を行う農家も出てきました。これにより2021年のアーモンドを含めたナッツ類・フルーツ類の収穫量に大きな影響がでてくる可能性が非常に高くなっています。