気候温暖化と干ばつは常態化する?

ワイルドブルーベリー生産地域の取組み


2020年、2021年と2年連続して干ばつや開花期の霜害など天候不順による不作が続き、ブルーベリーの価格も高騰しています。地球規模での気候温暖化が叫ばれていますが、ワイルドブルーベリー主要生産地域の一つメイン州の各年の気温を全ての年の平均気温との差で表したのが下のグラフです。2000年以降平均気温よりも1℃以上高い状態が恒常化しています。

メイン州立大学2022年1月論文より

また1950年から2020年の70年間の平均気温グラフ(下)を見ると気温が上昇を続けていることが判ります。

Kallol Barai, et al., Climate, December 2021

降水量は年によるばらつきが大きいのですが、近年は温暖化により降水量が非常に多い年と極端に少ない年に2分化されることが多くなり、平均的な雨量を記録することが少なくなってきています。

メイン州立大学2022年1月論文より

開花~結実期の降水量と干ばつ指数

2016-2018年は3年続き開花~結実期の干ばつ指数累計がゼロを割り込みました。特に2016年は-9と降水量が非常に少なくなり、その影響で2017~2018年のブルーベリーの生産量は大きく落ち込みました。同様に2020年も干ばつ指数累計がゼロを割り込み-8を超え大きく生産量を落としました。2021年はメイン州は春から初夏に欠けては降水量が少なかったものの7月から降水量が回復しワイルドブルーベリーの生産量は4万トン近くまで回復しました。


洪水と干ばつを繰り返す異常気象にどう対応するか?

ワイルドブルーベリーは4-10月の間、週当たり2.54cm(1inch)の降水量を必要とします(Trevett, 1967; Hunt et al., 2008)。また、ワイルドブルーベリーの多くは砂質の土壌に生育しており、排水性が良く、保水性が低いという特徴があります。また気温が高いと土壌表面からの蒸発量も多くなり温暖化と小雨が重なるとより土壌の水分が低下しやすいのも特徴です。

2020-2021年の夏は気温が平年よりも高く、降水量が少ない干ばつでした。2021年夏の平均気温は20世紀のこの地域の平均気温より1.66℃高く18.72℃でした。降水量は2020年は22.35cm、2021年は26.00cmであり、過去平均28.04cmよりも少なくなりました。

これまで「ワイルド」ブルーベリーということもあり、できるだけ人の手を入れず自然のままに育ててきたワイルドブルーベリーですが、高い健康効果から需要も順調に増えてきており気象条件にかかわらず生産量を安定させることが重要になってきています。そこで産地では「ワイルド」という特性を保ちながら生産量の安定化を目指す農地改良の検討が進められてきています。

マルチング(マルチ)による農地改良

マルチング(マルチ)とは畑のうねをビニールシートやポリエチレンフィルム、ワラなどで覆(おお)うことで土壌温度・土壌水分の調節や雑草を生えにくくしたり、病害虫の発生を低減させる農業手法です。

メイン州の産地では過去2年間に渡りおがくず程度の木質パウダーから3cm程度のウッドチップ(木片)まで様々なサイズのマルチングを施しブルーベリーの生育に与える影響を試験してきました。その結果、マルチを行わなかった場合よりもブルーベリーの茎が高く育ち、生する蕾の数も多く、面積当たりの生産量も高くなりました。果実のサイズや果実1粒あたりの重量やBrixには変化は見られませんでした。一方、長期間マルチを行うことで土壌の窒素濃度が下がり生育を阻害するリスクもありますが、2年間の検討では生育の阻害が見られませんでした。

総合的に見ておがくずのようなかなり細かいマルチがより効果が高く、コスト面でも有利であることが判りました。

Biochar(木炭パウダー)による土壌改良

世界中で間伐材などを利用した木炭パウダーを砂質土壌に混ぜ込むことで栄養分補給と保水性向上を測る試みが研究されてきています。

メイン州にある485のブルーベリー栽培エリアの内70%以上のエリアには灌漑設備が無く、高温干ばつの際にブルーベリーの植物体に回復できないダメージを及ぼすことがあり、その後天候が回復してもブルーベリーの果実が結実しないなどのリスクがありました。

木炭パウダーを土壌に混ぜ込み人工的に干ばつ状態を作り出して試験を行った結果、干ばつ状態の場合木炭パウダー無しでは土壌水分が6週間で4%まで低下しましたが、木炭パウダーを混ぜ込んだ場合20%を保っていました。

これらの検討はまだ試験段階ですぐに生産地全部に適応できる訳ではありませんが、マルチなどはこの2年間で深刻な干ばつによる生産量低下が見られた生産地域で導入が進んでします。生産量に影響を与えるのは降水量や土壌水分だけで無く、これらの対策だけで生産量を安定化させることができるわけではありませんが、生産量の安定化に向けて産地では様々なトライアルを行っています。