アメリカ北西部のスイートチェリーは熱波により減産に
6月下旬に観測史上最高気温を更新する熱波が襲う
6月15日に「2021年ワシントン州ダークスイートチェリーは豊作の見込み」でお伝えしていたとおり、6月中旬の時点では豊作が見込まれていました。
ところが、日本でも報道された通り6月26日(土)~6月29日(火)にかけてカリフォルニア州からアメリカ大陸西部~カナダのブリティッシュコロンビア州~を観測史上最大級の熱波が襲いました。ジェット気流の蛇行によりアメリカ西部に高気圧が停滞、多くの地域で最高気温が40℃を超えました。
アメリカ北西部で最もスイートチェリーの作付面積が多いワスコ郡、その郡庁所在であるThe Dalles市の過去平均最高気温は26~28℃です。実際2020年6月17日から30日の間の最高気温は21~30℃で平均最高気温25.8℃でした。
一方2021年6月17日から30日の間は26~46℃で平均最高気温33.5℃となりました。特に6月26日(土)にはこれまでの最高気温の記録42℃を上回る43℃を記録し、6月27日(日)には44℃、そして6月28日(月)には3日連続で最高気温の記録を更新し46℃まで達しました。
熱波により熟しつつあった果実に大きな被害が
6月26日~6月28日の3日間で40℃を超える最高気温を記録、この熱により収穫まっただ中で完熟・完熟を迎えつつあったスイートチェリーの果実に大きなダメージが発生しました。具体的には下の写真のように熱により果実が軟化、果実中の水分が蒸発したりすることにより果実に皺が寄ったり、実割れをを起こしたりしました。ダメージの少ない果実はピューレやジュースなどの加工向けで活用できますが、被害が深刻な果実は収穫されずにそのまま放置され鳥や野生生物の食事になる見込みです。一般的には木の上の方にある果実は直射日光を浴びる確率が高く被害が発生しやすく、逆に木の下の部分にある果実は枝葉により直射日光が遮られるため被害が軽くなる傾向にあります。
どの程度の被害になるかは不明
この熱波によりこの地域のほぼ全ての農園で被害が発生しています。熱波の前に収穫を早めに行った農園もあれば、水を散布して被害の軽減を図った農園もあります。また7月初旬にはほぼ平年並みの最高気温に戻りました。そのため被害は地域や農園によって異なりますが10%から70%ほどの果実に被害が発生している模様です。
ただこの熱波が発生したのが6月下旬でありその時点ではまだ収穫の1/3が完了していた段階です。熱波が襲った時点でまだ色づく前の実はほとんど被害を受けていません。そのため7月下旬に収穫・出荷する果実への影響はそこまで大きくないと見込まれております。
一部農園では果実だけでは無く、樹木そのものへのダメージも確認されております。そのような樹では今後成熟する果実へも影響が出てくる可能性もございます。